映画『万引き家族』感想

この映画は、いつか観ようと思いながら、なかなか手が出なかった。

しばらく後回しにしてきた。

だって、絶対に暗い気分になるから。

前に観た、同監督の『誰も知らない』もどんよりとした気持ちになった。

間違いなく、楽しい気分にはならない。

そもそもカンヌでパルムドールをとるような映画を観て、楽しかったことがない。

あまりにも鑑賞する気にならなかったので、反則かもしれないけれど、映画を観るよりも先にあらすじを読んでみた。

ああ、やはり、こんな感じか。感想はそんな感じだった。暗い。

でも、ショックに対する構えができたので映画を観ることができた。

 

安藤さくら

安藤さくらは朝ドラの『まんぷく』で初めて見た女優さんだ。

それとはだいぶ違う感じだけれど、あらすじを読んだ時点で、この映画の役にぴったりだろうなと思った。

だって生活感があるから。

ドラマに世界にいる、この世のものとは思えないほど美しい女優さんたちとはまったく違う。

安藤さくらのリアリティ。

いままで色々なバイトをしてきたが、こういう感じの人はどこにでもいた。

普通のパートのおばちゃんなんだけど、何だかちょっと後ろ暗い過去をもってそうで、あまり背景に踏み込みたくないタイプの女性。

子供を心配するような優しいところと、ゾッとするような冷たいところが共存している。

 

リリー・フランキー

胡散臭い役をやっている彼しか見たことがない。

調子がいいことを言うが、信用できない。

すべてが適当で、怠け者だ。

あまり優しくは見えなかったところが悲しい。

何を言っても嘘に思えるし、とにかく怖い。

実生活で関わりたくない。

 

樹木希林

ぴったりだ。ぴったりすぎる。

もう、その役を生きているとしか思えない。

 

上記の3人が大人の主要人物。

映画開始から30分の時点で、絶望的な気分になった。

これは、ダメだ。

大人3人が馬鹿。

知性が感じられず、わりと金への欲望や自分の感情に忠実。

人間としてギリギリの知能で、ようやく人としての体裁を保っている。

私にはそう感じられた。

それが途中で変わった。

 

見えない花火の音を楽しむ場面とか。

海の場面とか。

なんだか昭和30年代の普通の家族みたいだと思った。

でも昔にいたような生活をしている家族が現代にいたら、それは悲しいと思う。

みんな貧しければいいけれど。

人に見下されないためには、周囲とのつながりを断って、家族の中に閉じこもるしかない。

 

血のつながらない者同士があつまり、仮の家族をつくった。

いつもお金がないことに悩まさせていたためか、いささか強欲ではあったが、子供に対する関心と愛情はあった。

偽りの家族生活は、どこかいびつではあったが、幸福だった。

もちろんその幸福は続かないし、続かないこともみんな予測している。

続いたら、変な形にゆがんだに違いない。

ちょっと信用できない大人たちだったから。

でも続いてほしかった。

それが私の感想だ。

 

子供の貧困をテーマにしていると、この映画は評されているのをどこかで以前見た。

確かに子供たちは可哀そうだ。

自分で自分を救う、手立てがない。

ろくでもない大人にでも、頼るしかない。

でもやっぱり、大人たちも悲しいと思った。

やけどしたり足を骨折したり、危険な仕事を、共働きでそこそこちゃんとやっているのに、まともに家族を養うこともできない。労災もおりない。

怠け者だったり、考えが足りなかったりと、もちろん自業自得だろうけれど、でもやっぱり悲しい。

 

この映画をみたせいで、暗い気分になった。

でも失敗したとは思わない。

楽しい気分になることだけが、大事なことじゃない。

 

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