映画『半世界』感想 ネタバレあり
私がこの映画をみようと思ったのは、最近のマイブームである長谷川博己が出演していたからだ。
当時あまり評価は良くなかったみたいだけれど、私には面白かった。
しかしそれ以来、この監督の映画は見ていない。
だから久しぶり。
池脇千鶴も、出るならより良いだろう。
そう考えた。
観る前に一応、ストーリーを読んだ。
鑑賞前の想像としては、きっと淡々とした映画で、よく意味がわからない、フランス映画みたいな感じなんだろうと思っていた。
暗そうだ。
きっと退屈だろう。
しかし、私の想像は裏切られた。
意外とわかりやすかったし、笑えた。
退屈でもなかった。
ひどいいじめはあるし。
中古車屋には、面倒な輩もくる。
夫婦のきずなもあれば、長年の報われぬ片思いもある。
そうそう、元自衛隊の男も戻ってくる。
長谷川博己の演じた役も想像と違った。
何かショックなことがあって、自衛隊を辞めて、地元に戻ってきた。
クールでミステリアスで影がある役どころ。
そう紹介されていた。
まぁ予測がつくなと思った。そういう役どころは合いそうだし。
しかし違った。
いや、最初はそんな感じだったのだ。
でも途中から変わった。
別にクールじゃなかった。ミステリアスじゃなかった。
酒をのんだら、スタイルのいい、ただのおっさんだった。
しかも泣き上戸。
けっこう、しょっちゅう泣いている印象。
彼は海外の戦場から共に帰ってきた部下が、コンバットストレスによって自殺したことに責任を感じて精神を病んでしまったという。
赴任地から帰ってからの自殺ならば、普通は精神を病むほど責任を感じないと思うのだけど。
結局、いい人だ。
死んだ部下の母親に、ときどき名産品なんかを送っているみたいだし。
幼い娘に、ごめんねって連絡しているし。
あまり複雑な人物じゃない。
それだけに、切れた時の暴力シーンは重い。
いい人をここまで変えてしまうのだから。
稲垣吾郎の息子にケンカの仕方を教えているシーンでは、自衛隊での年月に誇りをもっているようにも思えたのだけれど。
優しかったから、だめになったのだろう。
「海の上だと安心するんだ」
良かったねと思った。
映画の最後の方の葬式で「俺がいれば、助けられたのに・・・」って言っていたのには、不覚にも笑ってしまった。
いやいや、それはちょっと無理だから。
しかし、彼がそう考えてしまうのも、精神を病んでいるせいなのかもしれない。それなら笑えないか。
稲垣吾郎は、とても役に合っていた。
あまり他人に興味がない感じ。
それが妻や息子であろうとも。
忙しすぎるせいだと言っていたが、違うと思う。
彼はそういう人間なのだ。
だから、彼はおかしな夢の中にいることがある。
海の底のような深い森。
遠くからは炭をたたくと出る、金属のような澄んだ音が響いてくる場所。
稲垣吾郎の演技がうまいかどうかは、私にはわからない。
ただ、合っていた。
役に稲垣吾郎が合っていた。
お調子者のもう一人の友人と、その父親も良かった。
彼らがいたから、この物語に現実的な手触りが生まれたと思う。
あと、池脇千鶴はやっぱりいい女優さんだった。
ラストは安易だということで、あまり評判がよくないらしい。
ま、安易といえば安易なのかもしれない。
でも、私としてはあれで良いと思った。
命は儚い、ときもある。
隣にいる人間が、あんなにあっさりと居なくなってしまうことだって、ありえることだ。
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