宮部みゆき『あやかし草紙』感想 ネタバレあり

あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続

三島屋変調百物語シリーズの5作目らしい。

私は4作目を抜かしてしまったようだが、一話完結だから特に問題は無し。

 

宮部みゆきの時代物は面白い。

彼女の描く登場人物がとても日本人的だから合うのだろうか。

でも、その時代物の中で生きたいとは思わない。

生きていくにはとても厳しい世界だから。

冬は寒そうだし。

 

『あやかし草紙』のなかで一番印象に残ったのは、一番最初の『あけずの間』というものがたり。

 

家族の1人が願いをかなえるための塩断ちをして、行き逢い神を家の中に呼び込んでしまう。この場合の行き逢い神とは、悪い妖しのことだ。

そして家族は一人ひとり死んでいく。

その経過が怖ろしい。

海外ドラマのクリミナルマインドに出てくる格言で、「家族は無情な世界の安息の地 クリストファー・ラッシュ」というのがあったが、その家の中に悪いものが入ってきたら、と考えると恐怖しかない。

現実にあったいろいろな事件が思い出された。

 

あとの物語りでは、主人公のおちかがとつぜん結婚してしまい、小旦那の富次郎に主役交代というのに驚いた。

もしかしたら4巻でその伏線があったのかもしれない。

表紙を見直してみたら第一期完結編となっていて、あ~なるほどと思った。

富次郎はどことなく京極シリーズを思い出させるような人物像で、面白くなりそうな感じもするのだけれど、おちかが結婚したから交代というのはなんとなく残念だ。