青天を衝け!

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青天を衝けを、私は毎週楽しみにしている。

楽しみにしているドラマがあるのは、いいものだ。

海外ドラマと違って、コンスタントに手軽に最新作が視聴できるし。

これが『刑事モース』とかだと、視聴に手間がかかる。

wowow契約したり。

タイムラグもある。

 

脚本が大森美香ということで、この青天を衝けは最初から、視聴決定ではあった。

彼女の『不機嫌なジーン』は、あまり日本のドラマを見る習慣のなかった私が、久々に面白いと思った日本のドラマだったから。

期待はしていた。

ちなみに来年の『鎌倉殿の13人』も視聴決定。『真田丸』は楽しかった。(『新選組』は私には合わなかったけど・・・)

再来年の『どうする家康』も視聴決定。『コンフィデンスマンJP』が楽しかったから。

脚本は、なにより大事だ。

ドラマを見るかどうかは、だいたいこれで決める。

ちなみに『いだてん』も『麒麟がくる』も楽しかったので、これで3年連続大河ドラマ視聴が続いているということになる。

このさきも数年は大河ドラマを楽しめそうで嬉しい。

5年連続にいくかもしれない。

 

青天を衝けの脚本のよさは、わかりやすさだと思う。

幕末ものは、色々な勢力がいて、色々な思惑があり、主張もその時によってコロコロ変わったりするので、とても難解。

龍馬伝』も『八重の桜』も『西郷どん』も、それで脱落した。

それが、青天では、むずかしくない。

いや、むずかしい所もあるのだけれど、そういうシーンのすぐ後で、必ず落としどころというか、わかりやすく感情的なシーンがくるようになっている。

情勢を理解できない私たちが置いていかれるみじめな気分にならないように作られているところはとても上手いと思う。

人物描写も同様だ。

栄一はわかりやすく、いいやつだ。

頭はいいし、行動力があり、人間性も信用できる。

重要な登場人物の気持ちが、ちょっとよく分らないな、ということもない。

大河というと、見るのに体力がいるという印象で、気合をいれないとみる気が起こらないため、後日録画で視聴というパターンだった。

そして録画が溜まっていって、観ないまま溜まった録画を消すことになる。

しかし青天はだいたいリアルタイムで見ている。

本当にストレスがない。

これから栄一が腹黒くなっていくという記事を目にして、ちょっと心配だけれど。

今のところ、初回からずっと楽しく見ている。

人間臭くなった栄一も、それはそれで楽しいかもしれない。

 

晴天では、俳優陣もいい。

重要な役どころに若い人が多い。

これもポイント。

私はベテラン俳優というものが、あまり好きじゃない。

俳優を長い間やっているせいか、感情表現のパターンが決まっていて、くどい。

あまりにも長い間見てきているので、どうしてもイメージがついてしまっていて、俳優が演技をしているようにしか見えない。

物語に入り込めない。

私がその映画やドラマを見ているのは、俳優の演技をみるためじゃない。

物語を楽しみたくて見ているのだ。

物語の邪魔をするなと、思うことがある。

映画監督の中には、わざと素人を主演に据える人もいる。

それはきっと、ほかの役をやったことのない素人なら、本当にその物語の人物のように見えるからだろう。

本物に見えるから。

青天の俳優たちは、若い。

変な印象もない。

ちゃんとまともな演技をしている。

一生懸命やっているようにも見える。

実に気持ちがいい。

 

あとはNHKの資金力。

映像を見ていると、やっぱりお金があるんだなと思う。民放でこのレベルは難しい。

日本から時代物のドラマがなくなってしまうのは惜しいのでNHKには頑張ってほしいとは思う。

青天のような物語を製作してくれるなら、受信料を払う価値もある。

 

 

ここで最近のエピソード感想

 

26話『篤太夫、再開する』

尾高長七郎の死の描き方がいい。

栄一は夢の中で長七郎に会う。

その後、何日かして長七郎の死を人づてに聞く。

栄一はあまり驚かない。

視聴者はそれで、夢を見た栄一が長七郎の死をすでに悟っていたことを知る。

悲惨な長七郎の死をどう描くのだろうと思っていたけれど、それは悲しく美しいシーンだった。

 

27話『篤太夫駿府で励む』

徳川幕府幕臣たちが、新政府下で、どういう道を辿ったのかを知った。今までの大河ではあまり描かれてこなかっただけに、勉強になる。

 

28話『篤太夫八百万の神

とにかく可笑しい。

不機嫌なジーン』のときにもみられた、テンポのいい掛け合いがここでも見られる。

大森美香の本領発揮といったところだろう。

今回は悲しい要素はあまりなく、栄一の冒険を視聴者は安心して見守ることができる。

考えてみれば、出世物語は大河ドラマの王道なのかもしれないと思う。

秀吉も信長も、主人公の時は物語のかなりの部分は痛快な出世物だった。

 

29話『栄一、改正する』

郵便制度が整っていく様子が見られる。

プロジェクトX」や池井戸潤テイストが好きな人に、おすすめしたい回だ。

このパターンも可なら、自動車産業本田宗一郎なんかを、大河の主人公にしても面白いかもしれない。

 

 

あと13話しかないのが実に残念だが、この調子で、どんどん快進撃をしていってほしい。

本当は80話くらいやってほしかった・・・

 

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映画『チョコレートドーナツ』感想 もちろんネタバレ

 

正直に言えば、私は、自分の人間性について、あまり不満に思ったことは無い。なぜかと考えてみて、根底に

『人間なんて、みんなこんなものだろう』

という気持ちがあるからだ。

利己的であろうが、臆病であろうが別にかまわない。

人間だもの。

 

でも、この映画の主人公二人は、良い人間だといえる。

ストーリーは、簡単に言ってしまえば、ゲイの中年男性二人が、知的障害のある少年を養育しようとするが、世間の偏見の壁が立ちはだかるというものだ。

ありがちな感動物語だと思うだろう。

実際、ありふれている。

物語にそれほどひねりはなく、ごくストレート。

ただ、この映画のすごいところは、それが白々しくならないところだ。

いつもなら「こんな奴いないだろ!」となるところでも、「こういう人間もいるのかもしれないな」と思わせてくれる説得力がある。

それが脚本の力によるものなのか、俳優たちの力によるものなのかはよくわからない。

 

主人公のルディは、女装趣味のショーダンサー。

ゲイを隠して生きる弁護士のポール。

ダウン症の少年、マルコ。

重要な登場人物はこの3人だ。

そして3人とも、とても立派。

 

ルディは自分の立ち位置を守るために、戦い続けるオカマだ。

といっても、やたらと好戦的なわけではなく、自分の誇りを守るために戦う。

彼女は愛情深く母性愛の塊といえる。

ポールはとても誠実で男らしい。

ルディと違って、情緒がとても安定している。

ゲイであることを隠してはいるけれど。

マルコはひどい母親に養育されていた少年。

知的障害があり、夜寝る前に物語を聞くのを楽しみにしている。

必ずハッピーエンドになる物語を。

 

欧米の映画でもドラマでも、こういうはなしの場合、物語にリアリティを持たせるために、登場人物たちの欠点を出してくることが多い。

卑怯だったり、臆病だったり、短気だったり、身勝手だったり、何かを隠していたりだ。

そして3人は感情をぶつけて傷つけあい、和解したり、しなかったりする。

たとえそれが、同性愛者でも、障碍者でも、別に立派な人間である必要はないのだと主張する。

私は外国の物語のそういう所が好きだが、この映画にそういう描写はなかった。

それでも嘘くさいとは思えない。

なぜか。

 

映画の前半部分を観ている時点では、なぜルディとポールがマルコを引き取って育てたがるのか、ちょっとよく分らなかった。

同情なのか。

一緒にいることによって、ペットのように愛着がわいたのか。

でも最後まで見て分かった。

彼らは疑似家族だったのだ。

一般的な社会から外れてはいるが、ちゃんとした真っ直ぐな心を持った3人が、運命の偶然にも家族を作った。

それは温かくて、清潔で、居心地の良い家族で。

3人はもう寂しくなくなった。

幸せだったから、離れたくなかった。

離れないために戦った。

それだけだ。

とてもストレートで強い気持ちが中心にあって、それがこの映画を説得力のあるものにしている。

 

ラスト、この物語はハッピーエンドにはならなかった。

あんなにハッピーエンドが語られるのを望んでいた少年の物語は、ハッピーエンドにはならなかったのだ。

私はそれを思うと、とても残念だし、悔しい気持ちになる。

 

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映画『万引き家族』感想

この映画は、いつか観ようと思いながら、なかなか手が出なかった。

しばらく後回しにしてきた。

だって、絶対に暗い気分になるから。

前に観た、同監督の『誰も知らない』もどんよりとした気持ちになった。

間違いなく、楽しい気分にはならない。

そもそもカンヌでパルムドールをとるような映画を観て、楽しかったことがない。

あまりにも鑑賞する気にならなかったので、反則かもしれないけれど、映画を観るよりも先にあらすじを読んでみた。

ああ、やはり、こんな感じか。感想はそんな感じだった。暗い。

でも、ショックに対する構えができたので映画を観ることができた。

 

安藤さくら

安藤さくらは朝ドラの『まんぷく』で初めて見た女優さんだ。

それとはだいぶ違う感じだけれど、あらすじを読んだ時点で、この映画の役にぴったりだろうなと思った。

だって生活感があるから。

ドラマに世界にいる、この世のものとは思えないほど美しい女優さんたちとはまったく違う。

安藤さくらのリアリティ。

いままで色々なバイトをしてきたが、こういう感じの人はどこにでもいた。

普通のパートのおばちゃんなんだけど、何だかちょっと後ろ暗い過去をもってそうで、あまり背景に踏み込みたくないタイプの女性。

子供を心配するような優しいところと、ゾッとするような冷たいところが共存している。

 

リリー・フランキー

胡散臭い役をやっている彼しか見たことがない。

調子がいいことを言うが、信用できない。

すべてが適当で、怠け者だ。

あまり優しくは見えなかったところが悲しい。

何を言っても嘘に思えるし、とにかく怖い。

実生活で関わりたくない。

 

樹木希林

ぴったりだ。ぴったりすぎる。

もう、その役を生きているとしか思えない。

 

上記の3人が大人の主要人物。

映画開始から30分の時点で、絶望的な気分になった。

これは、ダメだ。

大人3人が馬鹿。

知性が感じられず、わりと金への欲望や自分の感情に忠実。

人間としてギリギリの知能で、ようやく人としての体裁を保っている。

私にはそう感じられた。

それが途中で変わった。

 

見えない花火の音を楽しむ場面とか。

海の場面とか。

なんだか昭和30年代の普通の家族みたいだと思った。

でも昔にいたような生活をしている家族が現代にいたら、それは悲しいと思う。

みんな貧しければいいけれど。

人に見下されないためには、周囲とのつながりを断って、家族の中に閉じこもるしかない。

 

血のつながらない者同士があつまり、仮の家族をつくった。

いつもお金がないことに悩まさせていたためか、いささか強欲ではあったが、子供に対する関心と愛情はあった。

偽りの家族生活は、どこかいびつではあったが、幸福だった。

もちろんその幸福は続かないし、続かないこともみんな予測している。

続いたら、変な形にゆがんだに違いない。

ちょっと信用できない大人たちだったから。

でも続いてほしかった。

それが私の感想だ。

 

子供の貧困をテーマにしていると、この映画は評されているのをどこかで以前見た。

確かに子供たちは可哀そうだ。

自分で自分を救う、手立てがない。

ろくでもない大人にでも、頼るしかない。

でもやっぱり、大人たちも悲しいと思った。

やけどしたり足を骨折したり、危険な仕事を、共働きでそこそこちゃんとやっているのに、まともに家族を養うこともできない。労災もおりない。

怠け者だったり、考えが足りなかったりと、もちろん自業自得だろうけれど、でもやっぱり悲しい。

 

この映画をみたせいで、暗い気分になった。

でも失敗したとは思わない。

楽しい気分になることだけが、大事なことじゃない。

 

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