おざわゆき著『凍りの掌』感想
作者のおざわゆきさんのお父さんのシベリア抑留体験を漫画にしたもの。
主人公は大学生の頃のお父さん。
時代は昭和20年。
二十歳前後の若者が、敗戦も色濃い満州に送られ、終戦後は帰れるかと思いきや、シベリアの収容所に入れられる。
それから4年間の地獄のような抑留生活。
シベリア抑留体験記はいままで、何回か本で読んだことがあって、やはり同じような感じなので、実際にこんなふうだったのだろうけれど。
ひどい生活だ。
自分では体験したくないし、その時代に生きていなくて良かったと思う。
この本で知った新しいこともある。それは収容所の中でも、軍隊の中での上下関係がそのままだったということだ。
看守のロシア人だけではなく、同じ収容所仲間であるはずの日本人の上官が暴力をふるっていたということ。
終戦後の収容所のなかだというのに。
あと漫画だと、収容所の建物のようすや食べ物が具体的にわかった。
貴重な記録だと思う。
私としては、主人公が大学生時代に食費切り詰めて買っていたたくさんの本が、召集令状をもって田舎から出てきた父(著者の祖父にあたる)に処分されてしまったのが悲しかった。
それどころではない、という現実をつきつけられたような気がして。