小説「あの家に暮らす 四人の女」 感想
ネタバレしてます。
めちゃめちゃ、おもしろい。
三浦しおんの小説の中では、いちばん好きかも。
一般的には、この作者の小説では男の主人公のほうが、人気が高い。
が、私にはあまりぴんとこない。
どうも、作者の男性像を見せられている気がするから。
悪人でも、いいひとでも、かっこよくても、悪くても。
だったら女性のほうがいい。
自由度が高い。
気がする。
この四人のおんなたちは、読者である私を何度も裏切ってくれた。
いい意味で。
最初は淡々とした、でもちょっと笑える、ほのぼのとした感じで進んでいく。
こういう感じで最後までいくのかな、と思う。
でも、のほほんとした登場人物たちに、ちょっと屈託も見えてくる。
もしかしたら、彼女もしくは彼らの誰かが豹変して、とんでもないドロドロとした展開になるんじゃないかと、不安になってくる。それはそれで面白いけれど。
でも、誰も豹変したりしない。
みんなおかしな部分を持ちながら、微妙にバランスをとって生きてる。
そこそこ、いい人たちに見える。
そして中盤に差し掛かったところでのミイラ事件。
屋敷の開かずの部屋から見つかったミイラ。
リアルに頭髪がくっついている。
突然、ホラーな展開だ。
もしかしたら、何十年も前に行方不明になった父親の・・・。
まさか母が・・・?
でもこのミイラ、河童に見える。
・・・じゃあ、父親は河童?
そこで、なぜか突然、登場するカラス。
突然、展開はファンダジーに?
イデアとしてのカラス。カラスの集合体。完全なるカラス?
そしてうろつく父親の霊。
気味の悪い、リアルなミイラを、リビングに飾ってしまう一家。
なぜ?
私ならぜったいに飾らない。
そういう話しだ。
めちゃめちゃ、おもしろい。
特おもしろかったのが、鶴代と山田さん。
鶴代は、あらゆる母親の集合体、母親そのものではないかと思う。
すべての母親にはきっと、鶴代的なところがあるのではないだろうか?
ぜひ彼女に注目して、読んでもらいたい。
そして、山田さん。
一家にとって、よくわからない老人。
彼にも、裏の顔があるかと思ったら、なかった。
そこにとても驚いた。